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24話 秘めたる力と守るべきもの

Aвтор: みみっく
last update Последнее обновление: 2025-08-11 07:00:23

♢家族のような時間

「はぁい、よく頑張りましたぁ〜♪」

 その声はどこかお姉さんぶっていて、けれど優しさに満ちていた。ユウヤの髪を優しく撫でるアリアの手は、どこかくすぐったい。

 その様子を見ていたミーシャが、ぱたぱたと駆け寄ってきた。そして、アリアの真似をするように、ユウヤの頭に小さな手をそっと乗せた。

 ミーシャの手はとても小さくて、まるで子猫に撫でられているような感覚だった。

「あはは……♪ ユウくん、子どもみたーいっ」

 ミーシャは、くすくすと笑いながら、ユウヤの頭を撫で続ける。

「……いいじゃん。他に人がいないんだしさ……」

 ユウヤは照れ隠しのように言い返したが、その声はどこか弱々しく、耳までほんのり赤く染まっていた。

 すると、ミーシャがぱっと指を差してきた。

「ユウちゃん、顔があかーい♪」

 その無邪気な声に、アリアもつられて笑い出す。

「ほんとだ〜。照れてる照れてる〜♪」

「……うるさいなぁ」

 ユウヤは顔をそむけながらも、どこか嬉しそうだった。

 森の中に、三人の笑い声が穏やかに響いていた。それは、まるで家族のような、あたたかい時間だった。

♢魔改造キッチンとそれぞれの仕事

 家に帰ると、アリアが玄関をくぐった瞬間、驚いたような声を上げた。

「ゆ、ユウくん、ユウくんっ! なにこれ!? なんか変だよ……っ!」

 その声にユウヤはハッとした。

(ああっ……忘れてた。昨日の夜、調子に乗ってキッチンも魔改造してたんだった……)

 ユウヤはバツの悪そうな顔で頭を掻いた。

「あ……それ、昨日の夜さ。一人で暇だったから……。俺、料理も家事もできないし、手伝えないからさ。アリアに少しでもラクしてもらおうと思って……魔石に魔法を付与して、いろいろ仕込んでみたんだよ」

 しどろもどろに説明するユウヤに、アリアは最初こそ目を丸くしていたが、やがてふわりと微笑んだ。

「そっかぁ〜……わぁ……ありがとぉ……♡」

 その笑顔は、驚きと感動、そして嬉しさが混ざった、心からのものだった。

 ユウヤがキッチンの使い方を説明すると、アリアはすぐに理解し、楽しそうに使い始めた。

「わぁ〜! 水が自動で出る〜! すごーいっ♪ 火も薪じゃないなんて、凄すぎぃ〜!」

 アリアは、まるでおもちゃを与えられた子どものように、目を輝かせながらキッチンを見回していた。

「わぁ〜♪ ホントだぁ……でもぉ……」

 その隣で、ミーシャは少し不満げな顔をしていた。アリアの興奮とは対照的に、どこか寂しそうな表情を浮かべている。

「あぁ……ミーシャにとっては、思い出のキッチンだったんだよな……。ごめんな」

 ユウヤは、ミーシャの気持ちに気づき、そっと謝った。

 ミーシャはしばらく黙っていたが、やがて小さく首を振った。

「ううん……そうじゃなくて……私ができる薪拾いの仕事がなくなったぁ〜。水汲みもない〜」

 ミーシャは、しょんぼりと肩を落としながら言った。

(え? そっち!? 思い出のキッチンじゃなくて、そっち!? 昨日はあんなに「元に戻して!」って怒ってたのに……?)

 ユウヤは、ミーシャの意外すぎる反応に、思わず呆れたように眉を下げた。

「それならさ、食事の片付けと家の掃除があるじゃん?」

 ユウヤが提案すると、ミーシャはぱっと顔を明るくして、目を輝かせた。

「うんっ、それやるー! それと、料理のお手伝いもするー!」

「うん、手伝って♪」

 アリアも嬉しそうに頷き、ミーシャと顔を見合わせてにっこり笑った。

(……お、これは……抜け出すチャンスじゃないか?)

 ユウヤは、ふたりが仲良くキッチンに向かうのを見ながら、そっと思った。

(家には結界が張ってあるし、ふたりとも楽しそうだし。俺がいても見てるだけで手伝えるわけじゃないしな……)

 そう判断したユウヤは、すぐに村へ向かう準備を始めた。

「ちょっと買い物と、親に“しばらく帰れない”って伝えてくるなー」

「「はぁーい♪」」

 アリアとミーシャは、声をそろえて元気よく返事をした。その声に背中を押されるように、ユウヤは軽やかな足取りで家を後にした。

♢村での再会と挑発

 転移で村に戻ると、家の近くの道端に、シャルがぽつんと座り込んでいた。膝を抱え、どこか落ち込んだような表情をしている。

(……あれ? シャル? 前回、あんなに怒って「勝手にすれば!」って言って帰っていったのに……)

 ユウヤは、思わず足を止めた。

(うーん……正直、もうシャルはパーティに必要ないんだよな。俺が剣を使えるようになっちゃってるし。まあ、剣術を習ったわけじゃないから振り回してるだけだけど、上級の魔獣も倒せるし、問題ない)

 そのとき――

「あっ!! ユウくん!」

 シャルが顔を上げ、ぱっと目を見開いた。

(あ。やば……嫌なやつに見つかった……。転移で逃げるって手もあるけど、次に会ったときがもっと面倒になりそうだしな……)

 ユウヤは、覚悟を決めた。そして、あえて挑発するような口調で言葉を投げた。

「どうしたんだ? 彼氏と上手くいかなかったのかー?」

(……こうなったら、嫌われよう)

「彼氏って誰よっ!?」

 シャルはムッとした表情で立ち上がり、睨みつけてきた。その反応は、どこか図星を突かれたようにも見える。

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